ライラックをあなたに…



けれど、それが今は心地良く感じて…。

またもや、彼に抱きしめられる事に抵抗する事を忘れてしまった。


きっと1人でいたら、再び『死』を選んでしまう。

何もかもから逃げたくて、楽になりたいと望んでしまう。


だって、この先の人生『苦』しか、待っていないのだから。



再びゆっくり解かれた彼の腕。


「寿々さん、何か飲む?食べたい物は?」

「………」



耳元で優しく囁く彼の声が、今は唯一癒される。

少し低めでゆっくり落ち着いた感じの彼の声。


二日酔いの私に合わせてくれているからなのか。

私の表情を窺いながら、丁寧に言葉を紡ぐ。


彼はどこまでお人好しなのだろう?


「フフフッ…」

「え?あっ、笑った!!」

「えっ?」

「今、笑ったよね?」

「そう?」

「うん、笑ったよ。初めて見た、寿々さんの笑顔」

「ッ!!」