ライラックをあなたに…



「携帯のディスプレイに『侑弥さん』と表示されていた」

「………そう」


侑弥さんから電話が?

私が出勤してないから心配になったのかしら?


もう私とは……何の……関係も無いのに。



「それで?彼は何か言ってた?」

「ん、とりあえず『出勤途中で行き会い、体調が悪そうだから休むように話をした』と部長に伝えておくって…」

「……そう」



私への罪悪感のつもりなのかしら?

5年もの年月をたった一言で切り捨てられる人。

私の感情なんて邪魔にしかならないはずなのに。

何故、今さら構おうとするの?

いっそのこと、綺麗サッパリ放っておいてくれたらいいのに。

そうすれば、私だってこんなにも惨めな想いをしなくて済むのに…。



「……寿々さん」


無意識に流れ落ちる無数の雫。

拭う気力さえも無く、ただただ流れて……。


そんな私を抱き寄せ、優しく背中を擦る彼。

まるで子供をあやすみたいに。