ライラックをあなたに…



陽の当たりそうな場所には鉢植えが置かれている。

その他にもテーブルの上にはハーブポット。

本棚にはサボテンが飾られるように置かれている。



「植物が好きなの?」

「ん?……あぁ~うん、好きだよ。心が癒されるし、俺が目指してるモノでもあるからね」

「目指す?」

「ん」


彼はおもむろに立ち上がり、ベランダへと。


戻って来た彼の手には、線香花火のような植物が握られていた。


「それは?」

「これはディル。一年草のハーブだよ」

「ハーブ?」

「ん、果実や精油成分には昔から鎮静作用があると言われている」

「へぇ~詳しいのね」

「フフッ……まぁね」


少しはにかんだ彼。

けれど、すぐに表情を一変させ、じっと私を見据えた。


「寿々さん」

「はい」


真剣な彼の表情に思わず素直に返事をしてしまった。


「何?」

「落ち着いて、俺の話を聞いてね」


彼はそう言うと、私の手にそのディルを握らせた。