ライラックをあなたに…



「寿々…」


胸が苦しい。

ぎゅーっと掴まれているみたいに鈍く痛む。

胸の奥から込み上げてくる、何とも言えない熱い想いが涙となって溢れ出した。


「寿々……ごめん。本当にごめんな」

「うっ……ぅっ……ッハァッ……ッ…」


呼吸すら真面に出来ず、胸が苦しい。

声にならない声が嗚咽となって漏れ出してゆく。

すぐ目の前に彼がいるというのに、その彼の顔がどんどんと歪んで曖昧になってゆく。


溢れ出す涙で、完全に視界がおぼろげに。


「うぅっ……ッハァ…ッ……」


握りしめられている彼の手の甲に、無数の涙がポロポロと零れ落ちて……。


「寿々と過ごしたこの5年は、俺にとって凄く幸せな時間だった」

「……ぅっ……ハァッ……ンッぅっ…」


彼の顔がぼんやりとしか見えなくても、声はしっかり耳に届く。

何故なんだろう。

姿が見えなくなるように、声も届かなかったら、きっとこんなにも涙が溢れたりしないのに……。


残酷にも、彼の声はしっかりと耳に届いてくる。



苦しいよ。

胸が痛いよ。

込み上げてくる嗚咽と溢れ出す涙で、私の心が壊れてゆく。