ライラックをあなたに…



「俺がここにいる理由を聞いて欲しかったんだけど」

「あっ…………ごめん」


ほんの少しシュンとなる彼に思わず眉根を下げて謝った。

けれど、そんな私を優しい表情で見下ろす彼は。


「いいよ、別に。変ってない寿々さんに安心したから」

「え?」

「俺の好きな寿々さんのままでいてくれて……ありがと」

「ッ!!」



やっぱり、彼は野生化した!

こんな風に甘いセリフをポンポン吐く人じゃ無かったもん。

彼の言葉を聞く度に胸がキュンと反応する。


大変!

このままじゃ、私の心臓が持ちそうにない。


必死に腕を伸ばして、彼との距離を取ろうとすると。


「家に……帰ろうか」

「え?………………うん」


自然と繋がれる手。

何だかくすぐったい。


温かくて大きな手がしっかりと私の手を握りしめる。

それをじっと見つめて、不意に思ってしまった。


『もう、どこにも行かないでね?』