ライラックをあなたに…



そこは人気の雑貨屋さんで、店頭にスヌード、イヤーマフなどが沢山飾られていた。


それを見た私は無意識に首元に指先が伝う。


すっかり私物化している一颯くんのマフラー。

口元を覆うように肩を竦めても、もう彼の匂いを嗅ぐ事は出来ない。


毎日身に着けているうちに、すっかり自分の匂いがついてしまっていた。



一颯くんにもプレゼントを買おうかな?

いつ帰って来るのかも分からないけど、春になる前には帰って来るよね?



人気店という事もあり、沢山の人で溢れかえっている。

しかも、今日はクリスマスイブ。

店内あちらこちらに幸せそうなカップルばかり。


数ヶ月前の私なら、無意識に視線を逸らしていたと思う。

他人の倖せを微笑ましく眺めるほど、心に余裕が無かったから。


でも、今の私は違う。

こういうのって、成長したって言うのかな?


肩を寄せ合い、お互いに見つめ合う。

そして、どちらからともなく頬を綻ばせて……。


そんな倖せそうな人々を眺め、微笑ましく、そして羨ましく思える。

私にもいつか、あんな風に見つめ合える相手が出来るだろうか。



出来る事なら、彼が隣りで微笑んでくれたら………。