「失礼致します。お待たせ致しました。特製ブレンドティーでございます」
「ん~、色も香りもいいですね~」
先生はティーカップに顔を近づけ、香りを堪能している。
そんなお客様である先生に。
「そちらは、アイブライトとクランベリーをブレンドしてございます。アイブライトは疲れ目や目の充血の改善に効果があると言われ、少々苦みはございますが、癖の無い爽やかな口当たりです」
「へぇ~」
「それから、淡いピンク色の素はクランベリーでございまして……」
私は声のトーンを落として、先生にほんの少し顔を近づけ。
「クランベリーに含まれているキナ酸が尿を酸性化し、膀胱炎や感染症などに有効とされています」
そっと囁くように伝え、再び体勢を戻した私は笑顔で視線を合わせる。
「爽やかな口当たりと甘酸っぱい香りをお楽しみ頂ければと思います」
柔らかい笑みを浮かべたまま、先生が口にした表情を窺う。
今にも心臓が飛び出して来るんじゃないかと言うくらい緊張していた。
どうなの?
美味しくないのかしら?
先生はカップの中をじっと見つめ、無言のまま。
雰囲気を出す為にジャズのCDがかけられているが、その曲さえ耳に届かないほど、自分の心臓の音しか聞こえてない気がした。
思わず、ゴクリと唾を飲み込むと……。



