ライラックをあなたに…



「プログラマーをしてます。普段は殆どパソコンと睨めっこですかね~」

「そうですか……。では、目がお疲れになったり、肩が凝ったりしませんか?」

「あっ、します!!最近は歳なのか、目が霞んで苦労してますよ」

「大変なお仕事ですよねぇ」

「それと……」


先生は片手を上げ、手招きを始めた。

私はそれに応えるように顔を近づけると、


「座りっぱなしの職業柄、膀胱炎気味で……」


恥かしそうに肩を竦める先生が可愛らしく見えた。


演技とはいえ、先生の仕草につい笑みが零れる。

でも、膀胱炎に対して笑ったと思われたら失礼に値すると思い、即座に……。


「実は私もなんです。こういう仕事って、行きたい時に行けないのでどうしても我慢しがちなんですよねぇ。分かります、お客様のお気持ち」


そう小声で付け加えて、微笑んだ。



そして、踵を揃え一礼。


「では、直ぐにお持ち致します。少々お待ち下さいませ」



私は今一度会釈し、準備に取り掛かった。