ライラックをあなたに…



「お薦めのハーブティーをお願いします」

「へっ?」


思わず声が漏れ出した。


だって、先生方の手元にあるメニューにはそんなモノは無い。

お薦めのハーブティーって、何?


完全に思考が停止してしまった私に、お客様である先生が助け船を出してくれた。


「このお店の一番美味しいハーブティーって何ですか?」

「…………」


一番美味しいって事は目玉の商品って事よね?

でも、ここはお店じゃない。

試験会場であって、売りの商品だなんて……私、知らないわよ。



笑顔で見上げる先生と視線がバチッとあった。

『制限時間がありますよ?』

そう、目が訴えている気がする。


私は再び笑顔を顔に貼り付け、小さく息を吐き、ゆっくりと口を開いた。


「失礼ですが、お客様は普段何をされていらっしゃる方ですか?ご職業をお伺いしても宜しいでしょうか?」


ハーブティーには沢山の効能がある。

人それぞれ体調や心理状態が違うのだから、『美味しい』だけでは提供出来ない。

それは、バリスタとしての誇りだ。


すると、