ライラックをあなたに…



とは言え、部外者の私が簡単に立ち入れる場所では無い。

教授だってお忙しい方だ。

私の相手ばかりは出来ない筈だけど、幸いな事に年内は比較的時間に融通が利くらしい。



そして、教授の計らいで『外部研究員』と書かれた関係者用のパスカードを頂いた。

研究員だなんて、恐れ多い。

けれどこれが無かったら、この部屋に入るどころか敷地内に入る事さえ許されない事。


教授には感謝してもし切れない。


だからこうして、本当にささやかだけど手土産を持参してお邪魔している。




「おっ、今日はサンドイッチですね。私の大好物です」

「そうなんですか?」

「えぇ。海外に行く事も多く、色々な国のサンドイッチを食べるのが好きでね」

「へぇ~、いいですねぇ」


教授はハーブティー片手にサンドイッチを頬張った。



私は、教授の淹れてくれたハーブティーを飲みながら、一颯くんが今までに発表して来た論文を読むのが習慣になっていた。