彼の手元に視線をロックオンしていたら、突然可笑しな台詞が耳に届いた。
「今、………何て?」
「だからさ、………俺の彼女になってくれませんか?」
「………………え?」
彼は手にしていたフォークとナイフを置き、真っ直ぐ私を見つめて来た。
今私は、彼から交際を申し込まれているらしい。
食事をしながらサラリと口にしたものだから、思わず『はい』と返事しそうになったじゃない!!
一瞬、店内の喧騒が掻き消されたように感じるほど、私の脳はペースダウンしたようだ。
口の中に入っているサラダをゴクリと飲み込んで、それでも足りないとばかりにミネラルウォーターを流し込んだ。
その間にも彼は私をじっと見据えている。
何て答えていいのか、言葉に詰まっていると。
「返事は直ぐじゃなくてもいいから」
「………」
彼は気まずそうに苦笑した。
そんな彼をじっと見据え、心の整理を図る私。
このままズルズル先送りには出来ない。
きっと、彼は最初から私に好意を寄せていたんだもん。
断らない私が彼に期待させていたと取られてもおかしくない。
優しくて誠実で、笑顔が可愛らしい彼。
だからこそ、私も自分の気持ちに素直になろうと思った。
だから……―――………。



