ライラックをあなたに…



「寿々さん、どうかした?」

「へっ?」


昔を思い出して、今にも涙が溢れそうになっていた。


「ごめんなさい、何でもないです」


私は慌てて視線を逸らした。


今日も南雲さんとレストランで待ち合わせをしていた。

店内あちこちにもオーナメントが飾られ、途切れることなくクリスマスソングが流れている。


それだけでも切ない気持ちになるのに、今日もまた、目の前の彼は………私の心を刺激し始めた。


「この店のチキンソテーって結構有名でさ、友人カップルもよく来るって言ってたんだよね」

「………そうですか」


いつからだったか、彼は私に敬語を使わなくなった。

3つも年下だし、その点に於いてはあまり気にならないけど……。


だけど―――――。



「でさ、その友人カップルがさぁ、この店を貸し切ってクリスマスパーティーをしたいって言い出してさぁ」

「………そうですか」


彼は会話しながら器用にチキンソテーを口に入れる。

食べながら話すのはマナー違反だけど、それが気に食わない訳じゃ無い。


コース料理を食べてる訳じゃないし、別にそんな事はどうでもいいんだけど……。


「寿々さん、…………俺の彼女として、パーティーに参加しない?」