ライラックをあなたに…



11月下旬。


あれから、南雲さんとは数回食事をしている。

私のバイト時間を考慮して、昼から夕方前まで食事しながら話す程度。


別に映画を観に行くとか、ショッピングをするとか、ドライブをするとか……デートらしい事をしている訳ではなく。

ただ単に食事しながら話をして、お茶をしながら話をする。

本当にただ……それだけ。


だから、私もついつい断り切れず流されてしまっていた。



ただ、唯一、見てみぬフリが出来ない事が1つだけあり、それが徐々に色濃くなって来ていた。



そして、12月上旬。


街は煌びやかなイルミネーションで着飾り始め、どこからともなく軽快な音楽が流れて来る。

行き交う人々の足取りも幾分か浮き足たって……。


恋人たちは頬を赤く染め、肩を寄せ合い、幸せそうに見つめ合う季節。

――――クリスマス。



去年のクリスマスはあの人と教会巡りをしていた。

式場をどこにするか悩んでいた私達は、ミサが行われている教会に足を踏み入れていた。


そして、賛美歌を聴きながら2人肩を寄せ合い、この想いは『永遠』だと信じて疑わず、愛おしそうに見つめあっていたのに……。