ライラックをあなたに…



「ごめんなさい。今日もこの後に用事があるので……」

「えっと、その用事ってアルバイトだよね?」

「え?………ご存知なのですか?」

「うん、本部長から聞いてるから」

「………そうですか」


父はこの人に何でも話しているのだろうか?


破談になった事からすれば、アルバイトをしている事なんて些細な事かもしれない。

だけど、私からしてみれば、あまり言って欲しく無い事だった。


苦笑しながら視線を落とすと、


「寿々さん、次はもう少し早い時間から会えるかな?」

「えっ?」

「あっ、いや、深い意味じゃなくて……、もう少しゆっくり話がしたいから、ランチしながらってのはどう?」

「…………ランチ……ですか」

「うん………」


何だか断れるような雰囲気じゃない。

2時間の会話だって、別に不快に思う事も無く過ごせているし。


ちょっと強引な感じはあるけど、誘う方からしてみれば、これくらいが普通なのかもしれない。

私は一通りの事を考えてから顔を上げた。


「他意が無いのであれば……」

「本当?!」

「………はい」


結局、彼の押しに流されてしまった。