ライラックをあなたに…



2週間後の土曜日の午後14時。

南雲さんとカフェで待ち合わせをしている。


私はサラリとした手触りのニットにカプリパンツを合わせ、ロングカーディガンを手にしてカフェの前に到着した。


入口のドア越しに店内を覗くと、前回と同じ場所に彼の姿を確認した。

時間にルーズな人ではなさそうだ。


―――――カランコロン


「いらっしゃいませ」

「待ち合わせしてるので……」


店員に軽く会釈しながら、店内奥へと歩み進める。

すると、私のヒール音に気付いた彼は笑顔で片手を上げた。


やっぱり、笑顔が一颯くんに似てる。

無邪気に顔を崩すと片方だけに浮かぶえくぼが、ますます可愛らしく見えてしまう。

3つも年上なのに……。


「遅くなってすみません」

「ん?……いや、まだ3分前だよ」

「えっ?」


彼は腕時計を指差し、おどけてみせた。


前回よりも少し饒舌になった彼。

きっと、元々はこういう人なのかもしれない。






その後も彼の話の聞き手に回り、すっかり銀行マンの話術に呑まれ、気付けば2時間が経過していた。