ライラックをあなたに…



ディスプレイを確認すると、母親からのメールを受信。

内容を確認すると、『お盆には帰って来れるの?』と。



前回は何もせずに帰ってしまったけど、きちんと対処してから帰れば大丈夫だよね?


以前、一颯くんが雨対策をしていたのを見ていた事がある。

雨に弱い鉢植えを室内にいれ、強風が吹いても大丈夫なように細い茎には支柱をして……。


一通りの雨風対策を講じてから、私は実家へと向かった。





駅前のケーキ屋さんで母親の好きなロールケーキを購入して、西日が照り付けるアスファルトを黙々と歩いた。



「ただいま~」


リビングのドアを開けると、前回同様母親がキッチンで夕食の準備中。


「お母さん、これお土産」

「あら、気を遣わなくていいのに~」


そう言いながらも頬は綻んでいる。

私が手にしているケーキの箱に視線が釘付けだ。


「今日は泊まっていくから」

「植物は大丈夫なの?」

「うん、雨風対策して来たから平気」

「……そう。じゃあ、ゆっくりして行きなさい」


優しい笑みを浮かべながら、再び料理を始める母親。

今日はカレーライスらしい。

スパイシーな香りが部屋中に充満していた。