ライラックをあなたに…



8月に入り、カフェスクールにも漸く慣れて来た頃。

居酒屋『源ちゃん』もカフェスクールもお盆休みに突入した。


とは言え、私が他にする事なんて無くて……。


暇さえあれば、あの人との時間を大事にしていた私にとって、親友と呼べる友人はいない。


唯一、頻繁に連絡をくれるのは、あの会社で親しかった千秋先輩くらい。

彼が海外出張中で暇を弄び、淋しいらしい。

けれど、私が結婚したと思っているから、最近はめっきり少なくなった。


そう思うと、何だか物凄く虚しい人生かも。


話し相手も愚痴を零し合える相手もおらず、毎日淡々と過ごしている。


一颯くんへは頻繁にメールを送ってるけど、電波が圏外なのか連絡が無い。

受信したメールを見たら絶対返信しそうな彼だけに、恐らく届いてないのだと思う。



唯一心を癒してくれるのは、彼が可愛がっていた植物たちだけ。

毎日甲斐甲斐しく世話をしているせいもあり、少しずつ成長しているのが分かる。



一颯くんが毎日記録していた研究ノートに、微力だけど水撒きの時間や発芽や開花の有無等を追記するようになった。

彼が戻って来た時、少しでも喜んでくれるように……。


夕ご飯でも作ろうと腰を上げると、ポケットの中の携帯電話が震え出した。