ライラックをあなたに…



「お父さん」

「…………ん?」

「ごめんなさい、嫌な想いをさせて……」

「…………気にするな、もう済んだ事だ」


視線はテレビに向けたまま、言葉だけが返された。

けれど、その声音はとても穏やかで。

威厳のある父親のイメージから随分とかけ離れているものだった。


母親といい、父親といい。

両親の無限の愛情をひしひしと噛みしめ、甘い筈のプリンがほんのちょっぴりしょっぱく感じた。




翌日、母親が一緒に買い物に行こうと言い出した。

久しぶりに母娘でショッピングも悪くない。


私は母親が運転する車で市内のデパートへと向かった。



2人でのんびりデパート内を歩き、時折品物に手を伸ばしたりして……。

昼食はデパート内のレストランで済ませ、父親にお土産として好きな日本酒を買った。



家に着くと、急に夕立に襲われ、慌てて2階のベランダに干してある服を取り込んだ。


「結構濡れちゃったわね」

「……うん」


雨で濡れた服を室内干ししていて、ふと思い出した。


「あっ!!」

「……どうしたの?」


突然大声を上げた私を心配そうに覗き込む母親。

私はそんな母親に両手を合わせて――――。