ライラックをあなたに…



タオルドライしながらリビングに行くと。


「はい」

「サンキュ」

「水分、しっかり摂った方がいいよ?」

「ん」


長湯した事で彼女に気を遣わせてしまった。

彼女の手からミネラルウォーターを受取った。


「寿々さん、ありがと」

「うん、どう致しまして」


ニコッと微笑む彼女。

やはり、敢えて聞こうとしない。

そんな彼女が小池教授と重なって、背中を押してくれているように思えた。


そして、ソファに腰掛ける彼女の隣りに座り……。


「寿々さん」

「ん?」

「俺がいない間も、今まで通りにこの部屋にいていいからね?」

「え?」


俺の言葉にパッと顔を持ち上げ、大きな瞳が俺をまっすぐ見据える。


「俺、国際研究チームの一員として、南米で研究する事になった。だから、半年間この家を空けるから」

「…………えっ?」


くっきり二重の大きな瞳が更に見開かれ、唖然としている。

突然の俺の言葉に動揺を隠せないようだ。


「研究者として一生に一度有るか無いかの大きなチャンスなんだ。だから、俺はこのチャンスを掴もうと思う」

「………うん」



小さく頷いた彼女は、教授と同じ瞳をしていた。