ライラックをあなたに…



教授はハーブティーを飲み終えると、パソコンに真剣に向き合い始めた。

そんな真剣な教授を暫し見届けている。


研究者は時として、フッと世界に入り込む時がある。

俺はそんな教授の姿を何度も目にしていて、自ずとじっと見守るようになった。



数分後。

飲み終わったカップを洗う為、腰を上げると。


「本間君!!」

「はっ、はい」


急に声を荒げた教授。

何かの研究が纏まったのだろうか?


プリンター機から印刷された数枚の紙を手にして、俺のもとへ笑顔で歩み寄る教授。

俺はカップをテーブルの上に置き、教授の手元に視線を落とした。


すると、


「少し無謀ではありますが、今までの君の努力とその強い意志が宿った瞳に、私が一肌脱ぐ事にしました」

「はい?」


突然、力説のように瞳に熱がこもる教授。

俺より10㎝近く背の低い教授が、時に大きく見える時がある。

それは学者として偉大なオーラを放っている時で。


今、目の前の教授が、その時と同じオーラを放っている。


「本間君」

「………」

「男の大勝負に出てみませんか?」

「…………え?」