「いい瞳をしていますね、本間君」
「そ、そうですか……?」
全てを見透かされて、急に羞恥心に駆られた。
すると、
「想い人の背負う過去が大きいとおっしゃいましたね?」
「え?………あっ、はい」
「ではそれに対して、本間君はどれ程、努力をすれば良いとお考えですか?」
「………そうですね。未だかつてない程に困難な事を成し遂げないとならないと思います」
「そうですか」
俺は強い意志を持って、教授にそう答えた。
彼女の過去も全て丸ごと受け入れるには、相当の覚悟が必要だと思う。
まだ学生の身分だし、歳だって3つも下だし。
恋愛経験に於いても、俺には誇れるものが何一つない。
彼女と対等に付き合う為には、ある程度の覚悟ではダメな気がした。
言葉では何とでも言える。
『守ってやる』『助けてあげる』『傍にいるから』
けれど、彼女が切実に求めているものは違う気がした。
勿論、傍にいて守り癒す存在は必要だろう。
だけど、本当に彼女が求めているものは………『安定』だ。
身も心も全て委ねる事が出来る存在。
俺はそれを彼女に捧げたい………そう思った。



