「教授の奥さんって、どんな方ですか?」
「私の妻ですか?そうですねぇ……。笑顔が絶えず、優しく包み込んでくれる女性でしょうか」
「優しく……包み込んでくれる………」
「本間君にも、そういう人が現れたのですね」
「え?」
「あなたの傷付いた心を癒して、そして、包み込んでくれるような女性が」
「…………どうでしょうか。自分は真剣に考えているつもりですが、彼女の背負う過去があまりにも大きくて、正直自信がないです」
「自信ですか……。それは、きっと後から付いてくるものだと思いますよ?」
「へっ?」
「自信を持とうと必死に頑張る事に意義があるように思うんです。その結果、自分はこれだけ努力したんだという自負が自信となって自分自身の楯となります。きっと今の本間君には、その楯となる為の試練が必要なのでしょう」
「………試練ですか?」
「えぇ」
柔和な表情を浮かべる教授の言葉。
心の中にストンと入り込んだ。
試練。
俺もアイツの呪縛から解放されるためには、乗り越えるべき壁があるという事か。
それならそれで、全力で打ち破ってみせる。
心の靄に一筋の光が差し込んだ気がした。



