ライラックをあなたに…



彼の様子を窺いながら、


「そう言えば、そろそろ人事異動の辞令が出る季節ね」

「ん?……ん~」


年度末を控え、会社の雰囲気がリセットされる時期。

勿論、新卒の新入社員を迎え入れる為でもあり、各部署で体制が立て直される。


「なぁ、寿々」

「ん?」

「今夜は外で食事しないか?」

「えっ?」

「ここのところ、寿々も忙しくて疲れてるだろ」

「うん……まぁ…」

「久しぶりに外食でもどうだ?」

「うん、侑弥さんがそうしたいなら」


どうしたんだろう?

特別な日でも無いのに外食だなんて、今まで1度もした事ないのに。

会社の人にバレるからと、今まで極力外食も避けて来た。

けれど、来月には結婚式を挙げるんだから、もう隠す必要もないのかな?


挙式には会社の同僚は1人も呼ばない。

唯一出席するのは、彼の上司の部長だけ。

私達の仲人をお願いしている。

とても優しい紳士な部長で、私たちの関係をずっと秘密にしてくれている。

侑弥さんが一番信頼している人。