ライラックをあなたに…



「テスト勉強は捗ったの?」

「ん~、何とかね」

「そっか」

「今日は忙しかったの?」

「え?……いや、それほどでもないけど、何で?」

「ん~、何だか少し疲れてるみたい」

「………そう?」

「……うん」


伊達に毎日一緒にいる訳じゃないか。

肉体的には疲れてないが、アイツと対峙したせいで、精神的に少し疲れているのかもしれない。


俺の知らない彼女を知っているという、アイツの言葉に踊らされて。


無意識に溜息を零すと、


「ハーブティーを淹れてくるね」

「へっ?」

「一颯くんのには劣るけど、授業で習ったから……」


彼女の心遣いが嬉しかった。

俺の心境の変化をしっかりと気付いてくれた事にも。


柔和な表情で腰を上げ、キッチンへと向かう彼女の腕を俺は無意識に掴んでいた。


「………一颯………くん?」


立ち上がった彼女が、ソファに座る俺を見下ろしている。

何だかとても心配そうに……。


俺は堪らず、そんな彼女を引き寄せた。


「あっ……」