ライラックをあなたに…



目の前に横たわる彼女を見つめ、酷く胸の奥が痛む。


脳では理解しているつもりだ。

結婚適齢期の見目麗しき女性が、恋人と5年もの歳月を同じ屋根の下で生活してたんだ。

それなりの関係は当然あるものだと。


だけど、目の前の無防備な彼女が、アイツに抱かれていたのだと思うと胸くそ悪い気分になる。


俺って結構、器の小さい男なのかもしれない。

彼女の全てを受け入れるつもりでいたのに、過ぎた事に気が捕らわれてしまいそうだ。



俺は愛らしい寝顔の彼女を見つめながら、大きく深呼吸した。



「寿々さん、………寿々さん」

「………んっ……?」


再び肩を優しく揺すり、彼女に声を掛けた。

すると、ゆっくりと瞼を開け、視界に入り込んだ俺をまどろんだ瞳で見つめている。


「………おかえり」

「ん、ただいま。こんな所で寝てたら、風邪引くよ?」

「ん~、いつの間に寝ちゃったんだろ……?」


瞼を擦りながらゆっくりと上体を起こして、ニコリと可愛い笑顔を見せる。

今の俺には、そういう笑顔は反則なのに……。


ソファの上にちょこんと座る彼女の隣りに俺は腰を下ろして……。