自宅に戻った俺は、玄関で溜息を吐いた。
何だよ、さっきのあれは。
大法螺も幼稚過ぎてマジでウケる。
自分のテリトリーに帰還した俺は、漸く緊張の糸が切れたようだ。
素の自分に戻った俺は、何とも大胆発言した事に笑いが止まらなかった。
リビングへ着くと、彼女がソファの上で眠っていた。
俺の帰りを待たなくていいと何度も言ってるのに、彼女は1度たりとも布団で寝ていた事が無い。
まぁ、こうしてソファで寝ている事はあっても……。
そんな些細な事だが、俺は心の底から嬉しかった。
「寿々さん、………寿々さん、風邪引くよ?」
彼女は猫のように丸まって、気持ち良さそうに眠っている。
彼女を起こそうと肩をゆすると、半袖シャツの袖口から伸びる細くしなやかな二の腕が視界に留まった。
思わず、ハッと息を呑む。
アイツが言った言葉がリフレインして、俺の手を静止させた。
『キミの知らない彼女を知ってる』
結婚しようとしていた2人なんだ。
そういう関係だったとしても不思議じゃない。
むしろ、今どき普通だと思うが……。



