ライラックをあなたに…



寿々さんに想いを告げた数日後。


大学から帰宅し、寿々さんが作ってくれた夕食を頂いた。


寿々さんは『明日はミニテストなの』と、真剣そうにテキストと睨めっこしている。

そんな彼女をリビングに残し、俺は自宅を後にした。


ゴールデンウィークも過ぎ、陽気は段々と暖かくなる。

街路樹も青々と茂り、商店街の鉢植えも色鮮やかに咲き誇っている。


寿々さんの勉強が落ち着いたら、デートにでも誘おうかな?


そんな暢気な事を考えながら軽い足取りでバイト先へと向かっていた。




平日は会社帰りの会社員が多く、22時を過ぎれば店内は〆作業に入る。


「一颯、悪いが座敷の蛍光灯を交換してくれ」

「は~い」

「あと、そこの空サーバーを外のと交換しといてくれ」

「了~解」


いつものように大将の指示を仰いで仕事をこなす。



そして、23時を少し回った頃。


「一颯、もう上がっていいぞ~」

「は~い、すんませ~ん、お先に失礼しま~す」

「おぅ、お疲れさ~ん」


エプロンをロッカーに入れ、大将に会釈しながら勝手口へと。

そして、店から出た俺は自宅へと帰ろうと店の表側へ回った、その時!!