ライラックをあなたに…



彼女が会社を辞め、通信教育のスクーリングに通うようになると、その眼差しはますますエスカレートしていった。



『一颯くん、この植物が生薬で使われるみたいなんだけど、知ってる?』

『ん?どれ…?あぁ、これね。半夏(ハンゲ)は身体を温める作用があるから、食欲不振や消化不良とか悪阻の処方に使われる事が多くて、後は去痰、鎮吐、鎮静に効果的かな』

『へぇ~、やっぱり一颯くんて凄いね!!』

『そっ、そうかな……』



こんなやり取りを繰り返すうちに、彼女が向ける眼差しが嬉しくて堪らなかった。

素の俺でも引かずにいてくれる。

こうして普通に会話が出来る。

それも、俺的には凄く楽しくて……。



俺は単純なのかもしれない。

彼女にとったら当たり前の事でも、俺にとっては特別に思えて。


俺が作ったオーガニック料理も気に入ってくれて、ベランダの野菜に代わりに水を撒いてくれるようになったり。


俺にとって、彼女と過ごす時間がとても充実したものになっていった。