ライラックをあなたに…



「俺、本気だから」

「ッ」

「だから、傍にいてよ」

「…………でも……」



言葉と共に視線がゆっくりと落ちてゆく。

彼の好意をそう簡単には受け入れられない。


私にはそんな資格無いもの。


命を救って貰えただけでも有難いのに……。

婚約者にボロ雑巾のように捨てられた私を癒してくれて。

新しい人生へ立ち向かう勇気も貰い。

そんな私をずっと傍で支えてくれただけでも有難いのに……。


こんなにもボロボロで、しかも選定落ちしたアラサー女を『好き』だと言ってくれるだなんて。


嘘でも嬉しいのに……彼の瞳は嘘を言っているようには思えない。

だからこそ余計に受け入れられない。


私には、あなたの倖せを願うだけで充分だわ。




自然と瞼を瞑り、気持ちの整理を図る。


一颯くんなら、私なんかではなく、もっと素敵な女性がお似合いだよ。


将来が有望な彼。

そんな彼の隣りには、私みたいな曰く付の女ではなく、身も心も健全な女性が相応しいに決まっている。


そうよ、そうに決まっている。