ライラックをあなたに…



「俺、寿々さんが好きだよ」

「ッ?!」

「1人の人間として……」



な、何だ……、1人の人間としてね。

変に誤解を生むような事、言わないで欲しいわ。

心臓に悪いじゃない。



ホッと胸を撫で下ろすと、彼は更に腕を緩め、向かい合うような体勢で視線が絡み合う。

すると――――、


「でも、それ以上に1人の女性として、好きだよ」

「…………ふぇっ?」

「好き………。フフッ、すげぇ好きだよ」


優しい声音と蕩けるような視線に再び心臓が踊り出す。


そこには怪しい光を放った瞳ではなく、いつもの柔らかい物腰の彼がいた。



好き?

……好き??

…………好き?!!


彼の優しい声音が脳内でリピートされる。


今日何度目か分からない……完全思考停止。

脳細胞に喝を入れてやりたいけど、今はそんな事を気にしている余裕は無い。


恐れ多くも、目の前の美男子が私の事を『好き』だと言い放った。

どう考えたって、ありえない!!


私はこれは夢に違いないと自分に言い聞かせ、フルフルと頭を横に振ると。


「んっ……」


そんな私の頬を両手で彼に止められた。