ライラックをあなたに…



時間が経つのも忘れ、一心不乱に掃除をしていると。


「ただいま~」

「ッ?!」


玄関の方から一颯くんの声が聞こえた。

私はすぐさま玄関へ向かうと、


「何、………してるの?」

「あのね、……掃除してたんだけど…………おかえり」

「ん、ただいま。…………ってか、この荷物、何?」

「えっ?」


リビングの入口に立ってる彼は、足下にある私のボストンバッグを指差した。


「私の鞄だけど?」

「だから、何でここにあるの?」

「………さっき、私が置いたから」

「じゃなくって、何で鞄がっ………」


彼は突然室内を見回し、そして顔を歪め溜息を零した。


「寿々さん、とりあえず、ここに座って」

「……はい。あっ、でも、手だけ先に洗わせて?」

「……ん」


何だかちょっと怒ってる?

言葉の端々に苛立ちが垣間見える気がするんだけど……。

私、何かした?

部屋の掃除をしただけなんだけど……。


あっ、もしかして、勝手に掃除されるのが嫌だったとか?

………そうなのかな?