ライラックをあなたに…



「寿々のこと、忘れられないんだ」

「ッ?!…………何、今さら……そんな事、言わないでよ」

「本気なんだ。今の仕事を辞めてもいい。寿々の両親にも許して貰えるまで土下座するから………」

「んッ!?」



突然、縋り付くみたいに悲痛な表情を浮かべ、両腕をガシッと掴んで来た。


体格差、男と女の力の違い。

掴まれた拘束を振り払おうとしてもがいても、ビクともしない身体に恐怖の色が滲み始める。

思わず息を呑むと……。



「頼む!一生の頼みだ。俺は寿々が傍にいないと生きて行けない」

「い、今さら気付いたって……遅いじゃない」

「だけど、本当にダメなんだ。寿々が傍にいてくれたから……仕事だって上手くいってたんだ」

「………そんな事……急に言われたって………」


嗚咽に似た声音が耳を侵す。

両腕だけでなく、心までも締め付けられるように……。



「ホント、情けない話だけど、寿々と別れてデザインを纏め上げるどころか、設計図すら描けないんだ」

「えっ……」

「だから、頼む!!どんなに時間が掛かっても、必ず清算するから……」

「………」