ライラックをあなたに…



「そうなの?!」

「ん」

「どこに?」

「どこって?」

「だから、就職先!決まってるんでしょ?」

「…………ん~………」

「何?………もしかして、内定だからって事?」

「いや、内定じゃないんだけど……」

「ん?」


彼の口振りからしたら、決定してるけど言えないって事?

それがどういう意味なのか、私には分からない。


首を傾げて足を止めると。


「寿々さん、内緒だよ?」

「へっ?」


一颯くんは人差し指を口元で立てたと思ったら、私の耳元に近づき小声で耳打ちし始めた。


「俺ね、卒業後は大学で講師として働く事になってる」

「えぇ~っ?!それ、ホント!?」

「寿々さん、声でかい」

「あっ、ごめん」


ちょっと照れながら再び歩き始めた彼。

そんな彼の隣りを歩きながら、彼の顔色を窺って。


「講師って言っても、担当授業がある訳じゃないんだけどね。それに、それだけじゃ、食べて行けないからって、教授が研究の仕事が出来る職場を紹介してくれて……」

「研究の仕事?」

「ん」