動きやすい格好に着替えた私は、一颯くんと共に居酒屋『源ちゃん』へと部屋を後にした。
徒歩15分の距離。
恐らく、一颯くんの長い脚なら10分くらいだと思う。
何も言わなくてもこうして、私の歩幅に合わせゆっくりと歩いてくれる。
本当に優し過ぎるよ。
「そう言えばさ、一颯くんって、就活しないの?」
「ん?」
「タケ君やマサ君は3年でもしてるのに、一颯くんは今年卒業だよね?大学院の後はどうするの?」
大学4年生でも焦る所だけど、6年生の彼にとって今は大事な時期だと言える。
もしかして、私がいるから就活出来ないとか?
もしそうなら、どうしよう。
やっぱり、実家に帰るべきだよね?
グルグルと脳内で詮索しながら自問自答していると、ポンと頭の上に重みを感じた。
ふと視線を横に移すと、彼が優しい笑みを浮かべて。
「寿々さんは、何も気にしなくていいから」
「………でも」
「実はさ、もう決まってるんだよね」
「え?」
「だから、卒業後のこと」
ニカッと太陽のような笑顔で彼は答えた。



