ライラックをあなたに…



食べ終えた食器類を片付けていると、シャワーを浴び終えた一颯くんが姿を現した。


「ッ?!」


思わず、見惚れてしまうほどの肉体美。

長身の彼の腹筋は綺麗に6つに割れている。


上半身裸のハーフパンツ姿で、濡れた髪をタオルで拭きながら視線が絡まる。


「何?」

「へっ?」

「フッ、いや………ガン見されると照れるんだけど」

「あっ……」


もう恥ずかしくて、自分の頭を殴りたくなる。

あまりにも綺麗な体に見惚れてましたなんて、言える訳がない。


「別に」


必死に平常心を装いながら食器を戸棚へしまうと、


「あっ、もしかして『男』として意識した?」

「ッ?!」


冗談で言った一言でも、私には冗談に聞こえない。

だって、本当に『男』として意識してしまっていた。


あぁ、もう本当に自分が嫌になる。

ほんの1ヶ月前にボロ雑巾のように捨てられたばかりだというのに。


私は学習能力が相当低いらしい。


ほとほと呆れ返りながらエプロンを外し、私も出掛ける準備を始めた。