ライラックをあなたに…



会社を辞めてから、何度か『源ちゃん』にはお邪魔している。


人手が足りないと言う時は臨時バイトみたいに働いて、ちゃんとバイト代だって貰えている。

大将が『ここでバイトすればいいのに』なんて言ってくれるけど、それこそ、流されるだけ流されてしまう気がして。


優しい一颯くん、懐の深い大将の好意に甘えつつも、色よい返事が出来ないでいる。


でも『人手が足りない』と言われれば、現金な私はのこのことお邪魔してしまったりして。

優柔不断というか、自分に甘いというか……。


正直、自分でもどうしていいのか分からないでいた。




夕食は親子丼、サラダ、味噌汁で済ませてしまった。

一颯くんが『土曜日は混むから体力温存で簡単な物でいい』と言うから。


いつだって、彼に甘えてしまう。

年下だけど、彼には不思議と甘えられる。


多分、初対面で泥酔、嘔吐、号泣という醜態3原則を晒した挙句、私の自殺現場を目撃させてしまったからかもしれない。


これ以上無いほどに、この目の前の彼には隠す所がもう何も無い。

辛うじて下着は着けていたけど、裸同然の姿だって晒しているのだから。



私の弱い部分を全て晒してしまっているのに、彼はその部分に一切触れて来ない。

普通の人間なら、弱みにつけ込んで自分に有利に働くようにしたりするのに。



ホント、『本間一颯』という人物が不思議でならない。