ライラックをあなたに…



ティーカップを2つ手にしてリビングに戻ると、彼女が後ろ手にして何かを隠している。

テーブルの上にカップを置き、先程と同じ場所に腰を下ろすと。


「あのね?」

「……ん」

「相談事があるんだ」

「………相談?」

「うん」


本当に先程のダークな雰囲気とは一変して、何やら楽しそうに頬を緩ませている彼女。

俺はそんな彼女をじっと見つめていると……。


「今日、会社の帰りに書店に寄ったの」

「ん」

「でね?私、新しい資格を取ろうかと思って……」

「資格?………どんな?」

「フフッ。それは………これ!!」


彼女は瞳を輝かせながら、俺の目の前に一冊の本を差し出した。


「………ナチュラルフードと、ハーブコーディネーター?」

「うん。………どう?私に出来そうかな?」



彼女が差し出したのは通信講座から出されている雑誌のような物で、取得に至るまでのプロセスは勿論の事、その後の事まで色々と書かれている。


「寿々さんはこの資格を取って、何がしたいの?」

「……………カフェを開きたい」

「カフェ?どうしてまた、いきなりカフェなの?」

「いきなりじゃ………ないんだ」

「え?」