ライラックをあなたに…



「あぁ~、本当にスッキリしたから喉が渇いちゃった」

「あっ、俺、何か淹れて来るよ。何がいい?」

「ん?………そうだなぁ、ハーブティーがいいかな?」

「ハーブティーね?ちょっと待ってて」


キッチンへ向かおうと腰を上げると、心地良い鼻唄が聴こえて来た。


彼女は本当に吹っ切ったらしい。

愛らしい声で奏でる鼻唄は、本当に聴いてて心地いい。

俺は自然と笑みが零れていた。


すると、


「あっ、今、笑ったでしょ?!」

「ん?」

「音痴で悪かったわね?!」


プクッと膨れた彼女。

音痴で笑った訳じゃ無いのに、その膨れた顔も愛らしくて、ついつい笑みが零れそうになる。


「音痴だと思って笑った訳じゃ無いよ。さっきまであんなに深刻な顔をしてたのに、もうこんなにも明るい表情になってるからホッとしただけ」

「………そうなの?」

「うん。鼻唄、続けてていいよ」


俺は決して嫌味で言った訳でなく、本当に心からそう思った。

だから、彼女に伝わるように優しい表情でそう伝えた。



キッチンでハーブティーをじっくり淹れていると、再びリビングから鼻唄が聴こえて来た。

それを聴いて、俺もまた……スッキリした気分になった。