ライラックをあなたに…



膝の上で両手をギュッと握りしめ、必死に言葉にしている。

俯き加減の彼女がパッと顔を上げ、真っ直ぐに俺の瞳を見つめた。


「それとね。今日、実家から電話があったの。彼と彼のご両親が私の実家に謝罪に行ったみたいで……全て、話したらしい」

「…………そうなんだ」

「うん」

「寿々さんのご両親は………大丈夫そうだった?」

「………どうかな?電話だから表情は見えないけど、こればかりは時間が経たないと解決しないよ」

「…………そうだね」

「だからね、金輪際、あの人と関わる事は無いから」

「…………そう」



寿々さんは無理に笑顔を作って見せた。

膝の上では握りしめられたままの手。


今彼女は、精神状態をギリギリの所で踏ん張っているに違いない。

……それは、俺の為に。



彼女がこの家に住む為の条件。

『あの人とよりを戻さない』という俺が出した身勝手な条件に、彼女は誠意を見せてくれている。


それも、言葉に出したくも無い事を………。



俺に伝えるべき事を全て話した彼女は、再び俯いてしまった。

恐らく、声にする事すら限界なのだろう。



だから、俺は……―――………。