ライラックをあなたに…



彼の唇の隙間からゆっくり姿を現した私の指先。

私はそんな自分の指先に釘づけに。


すると、彼は傷口にチュッと乾いたリップ音を立てて……。



「もう、血は止まったみたいだね」


ニコッと優しい笑みを浮かべて、ハンカチで指先を拭う彼。


「ごめんね、俺が急に声を掛けたから」

「あっ、いえ…」


私は顔を左右に大きく振ると、彼は柔らかい表情で私の頭を優しく撫でた。


「怪我させたお詫びに食事でもどう?」

「えっ?」

「今夜、空いてる?」


小首を傾げて尋ねる彼。


「えっ、あっ、はい」

「ん、じゃあ今日仕事が終わったら、美味しいご飯をご馳走するよ」

「へ?」



一体、私に何が起きているのだろうか?

憧れの鷹見さんとお食事デートだなんて。


これって、夢よね?

私は思わず、頬を思い切り抓ってみた。


「痛ッ」

「えっ、何してるの?!」


私の行動を目の当りにして、驚いている彼が視界に。

夢じゃ……ないみたい。