ライラックをあなたに…



「では、有給を全て消化しても足りない2週間分の残りの勤務日を………有給扱いにして頂けますか?」

「………う~ん」


やっぱり無理だよね?

部長が社長に信頼されているとは言え、さすがにこれは無理に決まってる。


じゃあ、他に何かある?

退職金の上乗せ?

なんかそれって、人間として汚いよね?

あの人と同じ世界には堕ちたくない。


幾ら、頑張って働いて来たとは言え、私は彼ほど人望がある訳でも才能がある訳でもない。

会社にとって、なんのメリットもない人材にご褒美だなんてくれる筈がないのだから。


考え込む部長に、冗談だと口にしようとした、その時。


「有給扱いは難しいが、介護休暇として処理させて貰うよ」

「えっ?」

「来月の1日から新しく『介護休暇』というのが取れるようになるんだ。君は4月30日付で退職扱いになるから、前半を有給扱いにして、後半を介護休暇という事にしよう」

「……本当ですか?」

「あぁ。但し、急には無理だから、せめて今週いっぱいは引き継ぎをしっかりと頼めるかい?」

「あっ、はい!!それは勿論です」

「では、そういう事で、私の方から手続きをしておこう」

「ありがとうございます」

「いや、礼を言うのは私の方だ。本当に申し訳ない。そして、今まで、鷹見を支えてくれて有難う」

「ッ!…………」


部長の思わぬ一言に、目尻に薄らと涙が滲んだ。