ライラックをあなたに…



いつもより1時間近く早い出勤。

当然、オフィス内に人気は少ない。



自分のデスクに着いた私は、パソコンに貼られたポストイットを確認し、机の上に積まれた書類を片付け始めた。



ちらほらを出勤して来た社員に声を掛けられ、もうすぐ朝礼が始まる時間だと認識すると。


「寿々ちゃん、おはよ!カラダ、大丈夫なの?」

「あっ、おはようございます、千秋先輩。はい、もう大丈夫です」

「ホント?何だか、まだ顏色悪いよ?」



目の前のデスクに着いた千秋先輩が心配そうに覗き込んで来た。


体調が悪い訳じゃない。

ただ、彼と顔を合わせるかと思うと憂鬱なだけ。


でも、彼との関係も知らない彼女に、そんな事を話せる訳もなく……。


「本当に大丈夫ですよ。先輩、心配性ですねぇ」


必死に顔に笑顔を貼り付ける。

そうでもしないと、今にも吐気が襲って来そうで……。



次々と社員が出勤して来て、朝礼の時刻になった。




月曜日はフロア毎に朝礼がある。

残念な事に私の配属先である住宅デザイン課とあの人の配属先であるリノベ課は同じ階。


だから、もれなく顔を合わせる事になる。

………遠目であっても。