ライラックをあなたに…



『男』の色香を漂わせた声音も、きっと私に警戒心を植え付けさせる為の彼の優しさ。


勿論、初めから手を出そうなんて考えてないと思う。

襲おうと思えば、今まで幾らでも機会はあったんだから。


そう考えると、私は物凄く恵まれているのかもしれない。

不幸だと思ってたけど、こんな素敵な人に助けて貰えたんだから。



「ありがとうね……一颯くん」

「別に」


ちょっと照れたように顔を逸らした。

さっきまで大人っぽかったのに、こんな風に可愛らしい一面も持っているなんて。

あまりのギャップに胸がきゅんってしちゃうじゃない。


失恋で追った心の傷は、彼の優しさでほんの少し癒えた気がした。




冷め切ったハーブティーを口にすると、


「寿々さん」

「ん?」


カップをテーブルに置くと、ゆっくりと彼が近づいて来た。

別にどうこうなる訳じゃ無いって解ってるのに、心臓がトクンと脈を打つ。


直ぐ真横に近づいて来た彼は私の耳元に唇を寄せ、


「付き合ってくれない?」

「ふぇっ?」