ライラックをあなたに…



優しく解かれる腕の拘束。

ほんの少しだけ切なく感じた。

……人肌が恋しく感じるだなんて、相当弱ってるなぁ、私。



本間一颯という、生真面目すぎる人間に安心しきっているのかもしれない。


『裏切られた』という現実が拍車をかけて……。



「寿々さん」

「………はい」


優しい声音で語りかける彼。

じっと見据えるその瞳は一点の曇りもなく、澄んでいる。



「条件は2つ」

「………はい」


彼から提示される条件。

それが例え、理不尽なものであっても受け入れるつもり。

――――もう、私には後が無い。



瞬きもせず、彼の瞳をじっと見つめると。


「1つ目は、『年齢』を理由にしない」

「……へ?」


思いもよらぬ言葉に思わず唖然としてしまった。


「俺が3つも年下だけど、言いたい事は言わせて貰うし、寿々さんも年齢を理由に逃げたりしないで」

「…………解った」

「2つ目は………」


一颯くんは言い掛けて口を噤んだ。

私は2つ目が何なのか気になって、彼の顔を覗き込むと……。