初めてここに来た日の翌日。
彼の言動に惑わされ、私は彼との関係を覚悟した。
それは今でも変わらない。
『初めて』な訳でもないし、人生のどん底に落ちた私は自分が汚れたように思えてならなかった。
だからこそ、納得している。
勿論、そんな関係、無いに越した事ないけど、それでも他に行く所が無い。
だから、………私はどんな状況も受け入れると決めた。
奥歯を噛みしめ、両手を硬く握り、彼からキスされても動じないと心に決めていた。
すると、
「ッ?!」
ふわりと長い腕に包まれた。
爽やかなボディーソープの香りが鼻腔を擽る。
そして、優しい手つきで背中をゆっくりと擦る彼。
「そんな風に自分を貶めるなよ。見てて、マジで辛い」
「………」
「寿々さんが悪い訳じゃないのに、何でそうやって1人で我慢しようとすんの?」
「………」
「俺も男だけど、アイツとは違う」
「………ッ」
一颯くんは、私の心を見透かしている。
彼の言葉がじんわり、じんわりと冷え切った胸の奥に流れて来た。



