ライラックをあなたに…



彼は私の手首に貼られた絆創膏を見つめ、顔を歪めた。


「せっかく、一颯くんが助けてくれた大事な命だし、粗末には出来ないから……」

「……ホントに良いの?直接受け取るのが嫌なら、俺が間に入ってやるよ?」

「ううん」

「………そっか、分かった」

「ごめんね?」

「何で謝るの?」

「………」


私は両手を合わせ、ギュッと握りしめた。

自分自身に喝を入れ、ゆっくりと口を開く。



「仕事は出来るだけ早くに見つけるから」

「………ん」

「お金が貯まったら、直ぐにアパート探すし」

「…ん」

「掃除洗濯とか出来る事は何でもするから」

「ん」

「それまで、ここに置いて貰えないかな?勿論、勉強の邪魔はしないから!!」


私は彼に懇願した。

だって、実家には帰りたくないし、直ぐにアパートを借りれる状態でも無い。


友達のアパートに泊めて貰うのだって、良くて数日。

そんな状況の中で彼以外に縋れる人が思い当らなかった。


年上で、しかも破談になったような曰く付きの女。

彼の華やかな人生において、汚点にしかならないような女。

だけど、それでも……彼しか頼れる人が思い浮かばなかった。