ライラックをあなたに…



一颯くんがシャワーを浴びている間にテーブルの上の食器類を片付け、心の整理を図る。

何て言おうかしら?

やっぱり、素直に話さないとダメよね?

手帳の余白ページに考えつくだけの事を書き出し、彼が浴室から出て来るのを待っていた。


10分程すると、彼が髪をタオルドライしながら出て来た。

そんな彼に、


「一颯くん、ちょっと話があるんだけど……」

「………うん。ハーブティーでいい?」

「え?あっ、うん」


彼は慣れた手つきでハーブティーを淹れ、私の隣りに腰を下ろした。


恐らく、私が言わんとする事を予測しているみたいで、聞き出す素振りは見せず、ただ私の言葉をじっと待ってくれている。

そんな優しい彼に、私は………。


「あ、あのね?」

「……ん」

「さっき、見たと思うんだけど………。私、殆どのお金を結婚資金と新居にあててしまったから、今はお金が無いの」

「………」

「あの人はきっと返そうとするだろうけど、私は……受け取るつもりは無いの」

「………どうして?頑張って、働いたお金でしょ?」

「うん、それはそうなんだけど……。でも、そのお金を受取ってしまったら、未練とか執着みたいな感情に支配されそうで……。多分、精神的に耐えれないと思うの」

「………それって……」