ライラックをあなたに…




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彼女が自宅へ戻るのを黙って見送れなった俺は、彼女の言葉を押し切る形で付いて行った。


彼女が玄関を開けようとした瞬間、ガチャッという無機質な音を立てて目の前の扉が勢いよく開いた。


彼女の後ろにいた俺からは相手の顔は分からない。

だが、聞こえて来た声で相手が男だと直ぐに分かった。


だって、目の前の彼女が硬直し、怯えているように感じたから。




彼女を部屋の中へと追いやり、俺はその男と対峙した。


相手の男は俺とまでは言わないがかなりの長身で、如何にも仕事が出来るといった感じのスーツが良く似合うイケメンだった。


深夜という時間なだけにその恰好に違和感を覚えた。


こんな夜遅くになってもスーツ姿?

もしかして、彼女の帰りをずっと待っていたんだろうか?


いや、待っていたに違いない。


玄関前で途絶えた靴音から察して、彼女が帰って来たと思い玄関を開けたんだ。



そう思った俺は更なる怒りが込み上げて来た。


勝手に捨てておきながら、彼女の事を心配するなんて……。

自分勝手もいい所だ。


俺は敵意剥き出しに目の前の男を睨みつけた。