ライラックをあなたに…



「それは俺が持つから、靴を何足か選んで」

「…………ん」



ボストンバッグを彼に渡し、私はキッチンから紙袋を持って来て、それに履物を何足か入れた。

そんな私を侑弥さんは無言で眺めていた。



靴を履き終えた私は一颯くんの元へ歩み寄り、振り返った。



「今までありがとう。………さようなら」

「寿々ッ!!」



侑弥さんが呼び止める声を無視して、私は自宅を後にした。



自宅と言っても、元は侑弥さんが住んでいたマンション。

私の家ではない。


彼は出て行くと言っていたが、あんなにも想い出が詰まった部屋にこれ以上住める筈が無い。


2人で購入したマンションだって、住む気にはなれないし。

実家にも帰りたくない。


1人娘の私は、両親を悲しませてしまう罪悪感で顔を合わせる勇気が無かった。



………私の居場所はどこにもない。




再びエレベーターに乗り込むと、