ライラックをあなたに…



私の腕を侑弥さんが掴んでいる。

そして、その彼の腕を一颯くんが掴んでいた。


「おいっ、人の女に気安く触んじゃねぇよ」

「ッ?!」


一颯くんの一言に侑弥さんの顔が強張り、


「ふざけんなっ!寿々は俺の「あぁッ?!」


侑弥さんが言い返そうと口を開いた瞬間、彼はその発言を抑え込むように……。

その敵意剥き出しの表情に思わず怯んでしまった。



深夜1時近く、閑静な住宅街のとある一室の玄関先で、今にも一触即発の雰囲気。

私はどうしていいのか分からず、狼狽する。



「君は寿々の何?」

「それ聞いてどうするの?」

「………」

「とりあえず、その手を離せよ。そしたら、話してやるから」

「………」



一颯くんは声のトーンを変える事無く、淡々と口にしている。


そんな彼の言葉に応えるように、侑弥さんはゆっくりと私の腕を離した。


「寿々」

「………うん」


一颯くんの好意を無駄に出来ない。

私は小さく頷いて部屋の中へと駆け出した。